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東京高等裁判所 昭和45年(行コ)15号 判決 1970年6月29日

控訴人 宇田川秀太郎

被控訴人 東京法務局墨田出張所登記官 石川正夫

訴訟代理人 小川英長 外一名

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴人は「原判決を取消す。東京都墨田区寺島町三丁目一七七番七宅地一八坪五合二勺につき、東京法務局墨田出張所昭和四〇年七月一六日受付第二四入二九号をもつてなされた、右土地を同所同番七宅地五合二勾と同所同番九宅地一坪とする分筆登記の無効であることを確認する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の陳述は、原判決事実摘示と同一であるからこれを引用する。

理由

控訴人は、被控訴人のした分筆登記は、偽造の申請書によるものであり、かつ、所要の図面を添付していないという瑕疵があるので無効であるとして、これが無効確認を求めている。

ところで、登記官が不動産登記簿に所定の事項について記載することは、行政行為である公証行為の範疇に属するものであつて、それによつて新たに国民の権利義務を形成し、或は、その範囲を明確にする性質を有するものではない。尤も、右の如くしてなされた記載そのものの意味における不動産の登記は不動産上権利を第三者に対抗するための要件とされているけれども、それは法(民法一七七条等)が、特に定めた効果に外ならない。

従つて、右登記は、行政事件訴訟の対象たる行政処分ということができないものであるから、控訴人の本訴は不適法という外ない。控訴人としては、よろしく、抹消回復登記を申請するか(登記上利害関係を有する第三者があるときはその承諾書、又は、その者に対抗することができる裁判の謄本を添付することを要することはいうまでもない。)或いは、更に一歩を進めて、その有すると主張する権利と矛盾する登記の除去を求める訴を提起することによつて、その権利の満足ないし実現をはかるべきものである。

以上のとおりであるから、控訴人の本訴を不適法として却下した原判決は結局相当であつて、本件控訴は理由がない。

よつて、これを棄却すべく、なお、控訴費用は敗訴の控訴人の負担として、主文のとおり判決する。

(裁判官 岡部行男 渡辺一雄 川上泉)

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